けんじの1分 IT
便利になったのに、電話を解約した会社
最近、とある会社さんから
ITのご相談を受けた際に、
とても面白い話を聞きました。
その会社さんは、社長と作業員さん数人で
ちいさな町工場を経営されています。
事務所の電話が鳴る。
工場に直結したスピーカが大きく鳴り
着信を知らせる。
作業中の社長は、
手袋を外し
流しで手を洗い
事務所へ行き
デスクで電話に出る
そして、出た結果、
「単なる営業電話でした」
……。
これが、たまにあるならまだいいんです(いや、よくない笑)
1日に何本、多い時には毎日何十本もある。
こうなると、
電話対応そのものが仕事になってしまいます。
一本につきたった数分でも、
これが何十本も重なると、
とてつもない時間を消費しています、、、
そこで社長は、
広告で見かけた「AI電話」を導入することにしました。
「これで営業電話に時間を取られなくなるぞ」
そう思って契約。
そして実際に使ってみると……
ピタッと、電話が鳴らなくなります。
さすがAI の最新技術 !!!!!
営業電話が、ひとつも鳴りません!
「これはすごい!」
「これで作業に集中できる!!!」
数日間は、そう思っていたそうです。
ところが。
今度は、
別のところから連絡が来るようになりました。
社長の個別LINEです。
「社長!また整備お願いしたいのに、電話がなんだかおかしいよー!」
「社長!工場、乗っ取りに遭ってませんか!」
「なんか喋り方のおかしな人が電話に出て、びっくりして切っちゃった!」
……。
なんと今度は、個人LINEの通知が止まらない。笑
その結果、たった数日で、そのAI電話を解約することを決めました。
それはなぜか。
迷惑電話を排除しただけでなく、
「社長と直接話したいお客様」
も排除されてしまった。
ということに、あらためて気づいたからです。
AI電話によって、
「不要な営業電話」を減らすことには成功した。
でも同時に、
「社長へ直接相談したいお客様」
まで取りこぼしていた、
という大切なことに気がついた。
AI電話を導入して便利になり、
業務の効率も上がった。
でも、売上につながっていた大切な接点
「社長と直接話したお客様は、高い確率で成約していた」
ここに気が付かれたことが、
とても面白いところだと思うんです。
「便利」と「良い」は同じではない
ITの世界では、
「自動化できます」
「AIでできます」
「効率化できます」
という言葉が、たくさん出てきます。
もちろん、ぼくもITを仕事にしているので、
こういう技術は大好きです。笑
でも、
便利になることと、お客様にとって良いことは、必ずしも同じではない。
これは、かなり大切なことだと思っています。
電話が鳴らなくなった。
一見すると、これは大成功です。
でも、
「なぜ電話が鳴っていたのか?」
まで考えてみると、話は変わってくる。
その会社にとって電話は、
「営業電話を受けるためのもの」
ではなく、
「大切なお客様と直接つながるための入口」
だったのです。
であれば、短絡的に
「電話を減らす」
ことは目的ではなく、
「不要な電話だけを減らす」
ことが本当の目的だったはずです。
もうひとつ大切なこと
ぼくがこの話を聞いて、すごいなと思ったのは、
社長が実際に契約したことです。
実際にお金を払って導入した。
実際に使った。
実際に数日間、体験してみた。
そのうえで、
「あ、これはうちには違うかもしれない」
と判断し、これまたすぐに解約された。
ここ、ものすごく大切なことだと思うんです。
世の中には、
「あのAI電話、いいらしいよ」
「口コミで評判だった」
「〇〇社も使っているらしい」
という情報が、いくらでもあります。
もちろん、そういう情報も参考にはなります。
でも、
その会社に合うかどうかは、実際に使ってみないと分からない。
今回、導入前に誰かのレビューだけを見て、
「これは便利そうだから導入しよう」
と決めていたら、
もしかすると、
「社長と直接話したいお客様」
の存在そのものに、気づかなかったかもしれません。
逆に、
「AI電話なんてやめたほうがいい」
という誰かの意見だけを聞いて、
導入しなかったとしても、
「営業電話が毎日数十本も来ることで、どれだけ時間を失っていたのか」
という事実には気づけなかったかもしれない。
だから、
実際にやってみて、自分の会社で起きたことを見る。
そして、実際にやってみて
ちょっとちがうな、と思ったらすぐにやめる!
これは、口コミや評判だけを気にする生き方とは、
ちょっと次元が違うんですよね。
「失敗」ではなく「情報」
AI 電話を数日で解約した。
これだけ聞くと、
「最新技術の導入に失敗した事例」
と思う人もいるかもしれません。
でも、ぼくはそうは思いません。
だって、この数日間で、
「営業電話が、どれくらい来ていたのか」
「電話対応に、どれくらい時間を使っていたのか」
「AI電話にすると、どれくらい電話が減るのか」
そして、
「社長と直接話したいお客様が、実際にどれくらいいるのか」
ということが分かったわけです。
これって、ものすごいデータですよね。
しかも、
自分の会社で実際に起きたデータ。
これは、誰かの口コミでは分かりません。
そして、この経験があれば次は、
「じゃあ、営業電話だけをどうやって減らそうか」
「大切なお客様からの電話はどうやって残そうか」
という、次の改善に進めます。
一度やってみたからこそ、次の選択肢が見える。
ぼくは、これってすごく価値のあることだと思います。
「自分のお客様は、どこにいるのか?」
この話は、AI の話に見えます。
でも、じつはもっと大きな話なのかもと思っています。
自分のお客様は、どこにいるのか?
ホームページなのか。
LINEなのか。
Instagramなのか。
電話なのか。
紹介なのか。
そして、
「どこから問い合わせてくるのか?」
「どこで安心してくれるのか?」
「どこで最後に決断してくれるのか?」
ここを知らないまま、
「最近はLINEがいいらしい」
「Instagramをやったほうがいい」
「AIを導入したほうがいい」
「電話はもう古い」
と、新しいものを次々に導入しても、
もしかすると、自分のお客様がいる場所を、自分から消してしまうことだってある。
だからこそ、
ITを導入する前に、自分のお客様を知る。
そして、
分からなければ、小さく試してみる。
実際にやってみて、
「これは違った」
と分かることだって、立派な成果です。
むしろ、
「やってみたから分かった」
という経験は、誰かの口コミよりずっと強い。
便利だから導入する。
ではなく、
「自分のお客様にとって、本当に便利なのか?」
そこまで考えてみる。
今回のAI電話の話を聞いて、ぼくはそんなことを考えました。
ITは、導入することがゴールじゃない。
AIを使うことも、効率化することも、目的じゃない。
その先にいる、
「自分のお客様は、何を望んでいるのか?」
ここを見失わないこと。
たぶん、そこが一番大事なんですよね。
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