会社を辞めたら、

名刺の肩書きはなくなります。

当たり前ですよね。

でも、じつはこの当たり前のことを、

頭ではわかっていても、

実務レベルでは理解していない人が、

けっこういるんじゃないかと思っています。

今日は、そんな話です。

元本部長


ぼくが会社員だったころ、

財閥系の超大手商社を定年退職された方が、

鳴り物入りで入社。

たしか、営業本部長だったと思います。

その方、とにかくすごかった。

営業先の販路を拡大する会議になると、

「ああ、あそこの会社は、ぼくの先輩の○○さんが社長ですから大丈夫ですよ。」

「あっちの会社は、ぼくの元部下の△△くんが役員をしています。話を通しておきますよ。」

と。

会議のたびに、

「あそこも知っている。」

「こっちも知っている。」

と、まるで印籠のように人脈を出してくる。

まさに、

「ぼくの顔で契約を取ってきますから。」

と言わんばかりの勢い。

ぼくらも、

「おお、それはすごい人脈だなぁ。」

と思っていました。


ところが。

3か月経っても、

半年経っても、

1年経っても、

その「知り合いの会社」から、

なかなか新規契約の話が来ない。

「○○さん、あの件どうなっていますか?」

と聞いても、

「いや、いま進めているから大丈夫。」

と、涼しい顔。

ところが、

1年半経っても、

なんと、

新規開拓は一件もなし。

そして、その本部長は、

あっさり退職されました。

……。

いやいやいや、、、

ギャグかよ笑

毎回毎回、

「ぼくが話を通しておきますよ。」

と大口を叩く本部長に付き合っていた我々としては、

すっかり閉口です。笑


ただの「昔の人」

ようするにその方は、

「昔の仕事」を、「昔の名刺のまま」

続けようとしていた。


商社にいたころは、

「大手商社の営業本部長」

という肩書きがあった。

その肩書きで、

大きな会社の人と会っていた。

そして、

たくさんの人脈を作った。

もちろんそれは間違いなく、

その方が積み上げてきた実績です。

でも、

会社を辞めた瞬間に、

その「営業本部長」という肩書きなんてなくなる。

そして、

元先輩も、

元部下も、

元同僚も、

いまは、それぞれの会社で

それぞれの立場で仕事をしています。


元部下の立場からすると、

「昔の上司から電話が来た。」

たったそれだけなんですよね。

もちろん、

「お世話になったから話を聞こう。」

くらいはあるかもしれない。

でも、

「昔の上司だから契約します。」とはならない。

ましてや、

自分の会社にとって何のメリットもない話なら、

なおさらです。


これ、

冷たい話でも何でもないんですよね。

ビジネスだから当たり前なんです。

「たまたま知っている人」

と、

「いま取引する理由がある人」

は、

まったく違います。


だから、

「退職したら肩書きなんてなくなる。」

という言葉は、

単なる精神論ではなく、

実務的な話というだけなんです。

だだのひとりの人間

会社を辞めた翌日から、

「○○会社の部長」ではなくなる。

「○○商社の本部長」でもなくなる。

「○○銀行の支店長」でもなくなる。

ただの、

ひとりの人間になる。

でもそれって、

そんなに悪いことなんでしょうか?

ぼくは、むしろ逆だと思っています。


肩書きがなくなっても、

「この人と仕事をしたい。」

と言ってもらえる人になればいい。

会社名なんかなくたって、

「この人に相談したい。」

と言ってもらえる人になればいい。

名刺なんて渡さなくても、

「◯◯さんにお願いしたいんです。」

と言ってもらえるなら、

それはものすごく強い。


だから、

会社員のうちから、

「名刺を外したとき、自分には何が残るんだろう?」

と考えておいたほうがいいと思っています。

肩書き。

会社名。

役職。

社歴。

これらは全部、

会社から一時的に借りているものです。

もちろん、その中で積み上げた経験や実績は、

自分の財産になります。

でも、

肩書きそのものを、自分の実力だと思ってしまうと危ない。

都市伝説の「部屋」


そして、ちょっと笑えない話ですが、

世の中には、

「退職した会社に、いつまでも顔を出してしまうOB」

の話があります。

いわゆる

「OB接待部屋」

なんていう都市伝説まで聞いたことがあります。笑

退職した先輩が会社にやって来る。

「おお!○○先輩、お久しぶりです!」

と元後輩が対応する。

「△△くん!元気でやってるかね?」

部屋へ先輩を通し、

お茶を出す。

少し話す。

そして、

そのまましれっと放置。笑

もちろん、

これはあくまで「そんな話もある」という類いの話ですが、

もし本当にそんな光景があるとしたら、

ちょっと切ないですよね。


だって現役の人たちは、

いまの仕事があります。

いまの目標があります。

いまの人間関係があります。

そこへ、

「昔は俺がこの会社で……」

「俺は昔、君を育てて……」

などと、

「過去の肩書き」を持った人がいつまでもやって来る。

そりゃ困りますよ。笑


だから、

ぼく自身も気をつけたいと思っています。

過去の実績は、

大切にする。

お世話になった人も、

大切にする。

昔の仲間との縁も、

大切にする。

でも、

過去の名刺に、自分の現在を乗せない。

いま何ができますか?


「昔はすごかった。」

ではなく、

「いま、何ができますか?」

「昔、誰々を知っていました。」

ではなく、

「いま、あなたは誰の役に立てますか?」

「昔、この会社の偉い人でした。」

ではなく、

「いま、その会社と一緒に何ができますか?」

こっちですよね。


会社を卒業することは、

過去を捨てることではありません。

過去の経験を、

自分の名前で使えるようになること。

ぼくは、

そんなふうに考えています。


けんじの視点

会社を辞めたら、

名刺の肩書きはなくなる。

でも、

あなた自身まで、

なくなるわけじゃない。

むしろ、

そこからが本当の勝負なのかもしれません。

会社名がなくても、

役職がなくても、

誰かに、

「この人と一緒に仕事をしたい。」

と言ってもらえるか。

自分の本当の価値は、そこにある。

だからぼくは、

過去の名刺にしがみつくより、

いまの自分を、

これからの自分を、

少しずつ育てていきたい。

そして、

会社を卒業するときには、

「元○○」ではなく、

「ぼくは、こういう人間です。」

と、自分の名前で言えるようになっていたいと思っています。

一度しかない人生。

過去の名刺を眺めて生きるより、

次の名刺を、自分で作っていきましょう。


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