最近、ちょっと気になるニュースを見かけました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29A0T0Z21C26A0000000
そばチェーンの「ゆで太郎」が、会員制度を終了するというニュースです。
日経新聞の記事によると、ゆで太郎システムは「バースデークラブ」の終了を決め、
登録されている会員情報を消去する方針とのこと。
また、「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーションも、
アプリや予約システムで取得する個人情報を減らす方向に動いているそうです。
これ、なかなか興味深い動きだと思いませんか?
なぜなら、これまでのマーケティングでは、むしろ反対のことがずーっと言われてきたからです。
「まずはリストを集めましょう!」
「LINE公式アカウントに登録してもらいましょう!」
「メールアドレスを獲得しましょう!」
そんな言葉を、これまで何度聞いてきたことでしょう。
ところが今回、ゆで太郎さんは会員制度を終了し、個人情報を持たないという選択をしました。
そして、さらに興味深いことがありました。
社長ご本人が、Facebookでコメント!
https://www.facebook.com/photo?fbid=1696843282440771&set=a.456412189817226&locale=ja_JP
今回のニュースを見て、ぼくはゆで太郎システムの社長ご本人のFacebook投稿も拝見しました。
どうやら、正式にオフィシャル発表したわけではない段階で、すでに取材依頼が来ていたようです。
社長のコメントによると、これまでのバースデークラブは、かなりアナログな運用だったそうです。
個人情報はExcelで一覧表にし、商品部長とプレゼント発送業者さんの2か所で保管。
アプリなどを通じて運用していたわけではありません。
そして、今回の判断について、社長は次のように説明されています。
個人情報は万が一のリスクがあるため、持たないという選択をした。
そもそも、バースデークラブは誕生日にプレゼントを一方的に発送するサービスであり、
ニュース配信などのプッシュ型の情報発信には使っていなかったそうです。
つまり、会員情報を集めて、その人たちに商品を売り込むための仕組みではなかったわけですね。
さらに、もうひとつ興味深い話がありました。
Facebook上のファンクラブは、そのまま継続するとのこと。
約8,000人の登録がありながら、個人情報はほぼゼロだそうです。
これ、ぼくはとても面白いと思いました。
お客様とのつながりは残す。でも、個人情報は持たない。
そんな選択だってあるわけです。
長年続けてきたバースデープレゼントのサービスを終了することについては、
社長ご自身も残念に思われている様子でした。
それでも、個人情報を保有するリスクを考えて、終了するという判断をされた。
この考え方に、ぼくはとても興味を持ちました。
「まずはリストを集めましょう!」という時代
マーケティングの世界では、長い間、こんなことが言われてきました。
- まずは見込み客のリストを集めましょう
- メールアドレスを登録してもらいましょう
- LINE公式アカウントに登録してもらいましょう
- お客様の誕生日や属性を把握しましょう
- 購入履歴を分析して、次の購入につなげましょう
もちろん、これらは間違った考え方ではありません。
お客様の情報があれば、興味や関心に合わせたご案内ができます。
誕生日にクーポンを送ったり、以前購入した商品に関連する情報を届けたりすることもできます。
企業にとっては、お客様との接点を維持し、再来店や再購入につなげるための大切な仕組みです。
ぼく自身も、LINE公式アカウントやメール配信などを活用した
仕組みづくりをお手伝いすることがあります。
ただ、このタイミングで、いま一度考えたいことがあります。
その情報、本当にすべて必要なのでしょうか?
リストを集めることが目的になっていないでしょうか?
LINEの登録者数やメールマガジンの読者数が増えたことを成果として捉えるあまり、
その先にある本来の目的を見失っていないでしょうか。
お客様に商品やサービスを知ってもらうこと。
そして、実際に利用していただき、満足していただくこと。
本当に大切なのは、そこだと思うのです。
「お客様を集める」と「お客様が集まる」のちがい
今回、ゆで太郎さんの社長の投稿を読んで、ぼくの頭に浮かんだ言葉があります。
それは、
「お客様を集める」と「お客様が集まる」はまったく違うのではないか?
例えば、こんな違いです。
お客様を集める
- クーポンを配布する
- ポイントを付与する
- 会員登録を促す
- LINEに登録してもらう
- メールマガジンに登録してもらう
- キャンペーンで来店を促す
これらは、お客様に来てもらうための仕組みです。
もちろん、どれも有効な方法です。
一方で、
お客様が集まる
- 商品がおいしい
- サービスに満足している
- お店の雰囲気が好き
- スタッフの対応が心地よい
- また利用したいと思える
- 誰かに紹介したくなる
こちらは、お客様自身が「また行きたい」「誰かに教えたい」と思ってくれる状態です。
ぼくは、今回のゆで太郎さんの判断から、後者の考え方を垣間見た気がしました。
もちろん、ゆで太郎さんが会員制度を終了した理由は、
社長のコメントにあるように個人情報を保有するリスクへの判断です。
それを「お客様を集める必要がない」という経営方針だと断定するつもりはありません。
ただ、会員情報を持たなくても、ファンとのつながりを維持する方法はある。
この事実は、これからのマーケティングを考えるうえで、ひとつのヒントになるのではないでしょうか。
個人情報を集めることには、責任も伴う
お客様の情報を集めると、当然ながら、その情報を管理しなければなりません。
氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、購入履歴……。
情報が増えれば増えるほど、管理する仕組みも必要になります。
そして、どれだけセキュリティ対策をしていても、
不正アクセスや情報漏えいのリスクを完全になくすことはできません。
ここで、少し視点を変えてみましょう。
そもそも、持っていなければ漏えいする情報もありません。
もちろん、必要な情報まで何でも捨てればいいという話ではありません。
予約や配送、問い合わせへの対応など、サービスを提供するために必要な情報はあります。
しかし、何年も利用していない会員の情報や、使う予定のない顧客データまで、
ずっと保管しておく必要があるのでしょうか。
「いつか使うかもしれない」
その理由だけで、情報を持ち続けていないか。
今回のニュースは、そんな問いを投げかけているように感じます。
これからのマーケティングはどう変わる?
では、これまで
「とにかくリストを集めましょう!」
と言っていたマーケターの皆さんは、これからどういう手を打つのでしょうか?
リストマーケティングそのものがなくなるとは思いません。
本人が納得して登録し、その情報を必要な目的で活用する仕組みは、これからも重要でしょう。
ただ、これからは「とにかく集める」という発想から、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
例えば、次のような方向が考えられます。
1. 個人情報を持たずに利用できる仕組みをつくる
会員登録をしなくても予約できる仕組み。
アカウントを作らなくても商品を購入できる仕組み。
必要なときだけ必要な情報を入力してもらう方法です。
お客様にとっても、余計な登録作業が減ります。
事業者にとっても、保管する情報を減らせる可能性があります。
2. 個人を特定しないデータを活用する
マーケティングに必要なのは、必ずしも個人の氏名や住所とは限りません。
例えば、
- どの商品がよく売れているのか
- どの時間帯に来店が多いのか
- どの地域から利用されているのか
- どのページがよく読まれているのか
こうした傾向を把握するだけでも、商品やサービスの改善に役立ちます。
個人を特定する情報を必要以上に集めなくても、全体の傾向を分析する方法はあります。
3. お客様に「登録したい」と思ってもらえる価値をつくる
これも大切だと思います。
「登録してください!」
「LINEに入ってください!」
「メールアドレスを教えてください!」
とお願いするだけではなく、
「登録すると、こんな情報が届きます」
「こんなサービスを利用できます」
「あなたにとって、こういうメリットがあります」
と、登録する理由をきちんと伝えること。
そして、お客様自身が納得して選べること。
登録者数を増やすことだけではなく、
登録してくれた方との関係をどう育てるかが、ますます重要になるのではないでしょうか。
小さな会社や個人事業主も、一度考えてみませんか?
今回のニュースは、大手企業だけの話ではありません。
むしろ、ぼくは小さな会社や個人事業主こそ、一度考えてみてほしいと思っています。
例えば、こんなことはありませんか?
- 何年も使っていない顧客リストが残っている
- 昔作った会員登録フォームがそのままになっている
- メール配信サービスに、もう利用していない人の情報が残っている
- 使っていない予約システムに顧客情報が保存されている
- 何のために集めているのか、よくわからない情報がある
ホームページや予約フォームを作るときも、ついつい入力項目を増やしてしまうことがあります。
氏名、電話番号、メールアドレス、住所、生年月日、会社名……。
でも、問い合わせに必要なのは、本当にそのすべてでしょうか?
例えば、最初の問い合わせではメールアドレスと相談内容だけで十分かもしれません。
住所は訪問が決まってから確認すればよいかもしれません。
必要な情報を、必要なタイミングで取得する。
それだけでも、お客様の負担を減らし、事業者側の情報管理もシンプルにできる可能性があります。
もちろん、業種やサービスによって必要な情報は異なります。
大切なのは、他社がやっているからという理由だけで入力項目を増やさないことです。
リストを集めることが目的になっていませんか?
今回のゆで太郎さんのニュースと、社長ご本人のコメント。
ぼくは、そこからひとつの経営哲学を垣間見た気がしました。
「集める」から「集まる」へ。
つまり、
- お客様を集めることばかり考えるのではなく
- お客様が集まりたくなる理由をつくる
もちろん、どちらが正解で、どちらが不正解という話ではありません。
リストマーケティングが有効なビジネスもあります。
会員制度やポイント制度によって、お客様に喜んでもらえるサービスもあります。
ただ、すべての事業者が同じ方法を採用する必要はないと思うのです。
リストを集めることに一生懸命になる前に、
自分たちの商品やサービスは、お客様にまた選んでもらえるものになっているだろうか?
誰かに紹介したくなるような価値を提供できているだろうか?
そんなことを考えてみるのも、大切なのではないでしょうか。
お客様の情報をたくさん持っていることと、お客様から愛されていることは、必ずしも同じではありません。
これからは「何を集めるか」だけではなく、「何を集めないか」。
そして、
どうすればお客様が自然と集まってくれるのか。
そんな視点も、マーケティングや経営に必要になってくるのかもしれません。
ぼくは、これからのゆで太郎さんにも注目していきたいと思います。
ちなみに、ぼくはゆで太郎さんのおそば(冷やし薬味そば)が大好きです♪
これからも食べに行きますよー!!笑
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